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ソフトウエア化するクルマづくりのデジタルツインにチャレンジ

648 425 HCCR - Human Capital Consulting Recruiting

クルマの変革期のものづくり

ソフトウエアとハードウエアを一元管理

 自動車産業は今、大きな変革期に差し掛かっている。しばしば語られるキーワードが「CASE」(Connectivity=つながる車、Autonomous=自動運転、Shared=シェアリング、Electric=電動化)である。

 こうした潮流を受け、自動車という製品そのものにも構造的な変化が起こっている。かつて、自動車は機械部品の塊だったが、次第に電子部品を多く搭載するようになった。昨今では、衝突被害軽減ブレーキに代表される自動制御や自動運転の開発も進んでいる。「最近では車載ソフトウエアが製品の付加価値に占める比重が高まっています。例えば、カーナビや音楽配信サービスとの連携、AI(人工知能)活用などインフォメーションサービスはその幅を広げており、またクルマそのものの制御もソフトウエア化が進んでいます」と、本田技術研究所の石﨑哲男氏は語る。そのため、設計・開発においては、機械部品だけでなく電子、車載ソフトウエアも含めた全領域をカバーする視点がより求められるようになった。これは自動車のみならず、家電をはじめ多くの製品分野で見られる動きである。

こうした課題が端的なかたちで現れるのが、自動車関連各社が研究開発にしのぎを削る自動運転分野だろう。石﨑氏は次のように説明する。

石﨑 哲男 氏

株式会社本田技術研究所 四輪R&Dセンター
デジタル開発推進室 CIS2ブロック
マネージャー
主任研究員
石﨑 哲男 氏

「自動運転では、周辺環境を認知するレーダーやカメラが重要な役割を担います。例えば、設計の段階でレーダーの位置を変更したとしましょう。すると、レーダーからの情報を処理する制御系のソフトウエアにも変更が必要になります。取り付け位置変更の情報がソフトウエア開発チームに共有されていなければ、安全・安心という自動車の品質を保証できませんし、情報共有の遅れは、大きな手戻りにつながります」

そこで注目を集めているのが、車載ソフトウエア開発と機械部品、電子含む車体(ハードウエア)の製品開発を行うそれぞれのシステムの連携である。自動車は数万点もの部品で構成されており、加えて膨大な量のソフトウエアを搭載しているので、それぞれの管理はシステム化されている。その管理システム同士を連携させてソフトウエアとハードウエアを一元的に管理、開発することで、品質を保証しつつ効率的な「デジタルものづくり」を推進しようという考えだ。

ソフトウエアとハードウエアを一元管理したデジタルものづくりの必要性を自動運転分野の開発陣から強く訴えられた石﨑氏は、自動車業界でも高い関心を集めている、システムの連携の実証プロジェクトを立ち上げた。

図車載ソフトウエア(アプリケーション)開発とハードウエア(車体)の製品開発を行うそれぞれのシステムの連携が必要

 

膨大なデータをつないで
デジタルツインを実現する

 この本田技術研究所の意欲的なチャレンジに参画したのは、この領域の世界的なリーダーと目される2社。日本IBMとダッソー・システムズである。日本IBMはソフトウエア開発基盤と関連サービス、ダッソー・システムズは3次元設計/製造・データ管理製品と関連サービスを提供している。

飯田 浩二 氏、石﨑 哲男 氏、村澤 賢一 氏

本田技術研究所と日本IBM、ダッソー・システムズ3社協業による、ソフトウエアとハードウエアを一元的に管理するプロジェクトが行われた

 自動車産業は長い間、デジタル活用に取り組んできた。例えば、3次元モデルを用いたシミュレーションを活用することで、試作の数を減らして開発リードタイムとコストを抑える。こうした動きは、数年前から一層加速しており、本田技術研究所では2014年に「VMC」(バーチャル・マニュファクチャリング・サークル)という大規模なプロジェクトを開始した。これは、デジタル技術により開発の効率化と、知識・経験の活用を実現し、Honda全体の開発力の向上を図ることで魅力的な商品を創出することを目的とした社内プロジェクトだ。

「VMCのC(サークル)には、データをつなげるという意味が込められています。設計と製造、販売、さらにアフターサービスなどの各段階で生まれるデータをつなぐことで、品質向上と効率的なものづくりを実現する。こうした取り組みの土台となるのが、生成される膨大なデータのマネジメントです。ソフトウエアとハードウエアを一元的に管理することは、そのための重要な施策と位置付けられます」と石﨑氏は本田技術研究所の取り組みを説明する。

 このVMCはまさに、今世界で注目されているデジタルツインを実現しようというものだ。デジタルツインとはリアル世界の事象をデータ化し、バーチャル世界にリアル世界を再現し、そのバーチャル世界で分析や監視を行うこと。「このような取り組みの延長線上には、例えばIoT(モノのインターネット)を用いたセンサーデータによる実際の利用状況と、コンピューター上のシミュレーションの結果を突き合わせることで、お客様がどのような使い方をしているのかを把握し、新たな製品開発のヒントにつなげることなどが考えられます」と、日本IBMの村澤賢一氏は補足する。

デジタルツインが普及するにつれ、データはますます重要になっていく。さらに、「もう一つ、自動車の複雑性が増すにつれてすべてをリアルでテストすることに膨大な工数を割いており、シミュレーションの重要性がさらに高まっています。そのためにも、大量のデータ、すなわちソフトウエアだけ、ハードウエアだけではなく、双方のデータが必要になるのです」と村澤氏は話す。

村澤 賢一 氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
理事 Watson IoT事業部長
村澤 賢一 氏

企業の壁を越えた共創を
世界標準の手法で実現

 開発において、ソフトウエアエンジニアとハードウエアエンジニアの部門間調整は会議などが主体であり、増加し続ける情報の連携をリアルタイムに行うのが難しかった。さらに、システムは、車体を開発するハードウエアエンジニアのための3次元設計/製造・データ管理製品に依存したものだった。また、開発プロセスは本田技術研究所が独自に築いていたが、自動運転領域は幅広い英知の結集が必要なため、本田技術研究所の中だけで閉じることはできず、多数のサプライヤーとの共創が求められるようになっていた。

 こうした課題を解決し、ソフトウエアとハードウエアの開発データの一元的な管理をするには、どうしたらいいのか。本田技術研究所が打ち出したのが、「オープンネス」という方針である。「本田技術研究所は独自性へのこだわりが強い会社ですが、自動運転の時代にすべてを独自技術でまかなうことはできません。社会インフラとのやりとりなども必要になり、変化の激しい分野でもあるので、世の中の標準を取り入れることが重要だと考えました。そこで、このプロジェクトにおいても、世界の技術標準の手法であるOSLC(Open Services for Lifecycle Collaboration)を採用しました」と石﨑氏は説明する。

OSLCはIBMが起案し中心となって確立されたものだが、これに準拠することによって、他のサプライヤーとのさらなる共創も可能になる。

「ダッソー・システムズも独自技術にこだわりが強い会社なのですが、世の中の流れもあり、今回のプロジェクトをきっかけとして業界標準であるOSLCへの対応を開始しました」とダッソー・システムズの飯田浩二氏は話す。

飯田 浩二 氏

ダッソー・システムズ株式会社
執行役員
ホンダ・グローバル・アカウント事業部長
3DSビジネストランスフォーメーション事業部
ホンダ・グローバル・アカウント
飯田 浩二 氏

プロジェクト期間は2017年7月から翌2018年8月までの1年余り。その具体的な内容は、ソフトウエアとハードウエアを一元的に管理するためにシステム間相互でのデータ連携についての検証だ。日本IBMとダッソー・システムズの緊密な連携と柔軟かつスピード感をもった対応によって、データ連携の検証結果は満足ができるものとなった。現在では、次のステップである実践フェーズに向けた準備が進められている。

このプロジェクトには、IBMのグローバル開発チームと、フランスのダッソー・システムズ本社のエンジニアチームも積極的に関わった。グローバル展開するIT(情報技術)企業の連携と知見が成功の鍵となった。

 「変化が激しい今の時代では、スピード感と柔軟性を実現するために、『共創』が強く求められています。今回のプロジェクトは、共創が求められる今だからこそ実現したのだと思います。これからもIT分野から、日本の製造業のものづくりを支えていきたいと思います」と村澤氏と飯田氏は力を込める。

今回の本田技術研究所の協業とデータ連携の達成は、本田技術研究所が目指すデジタルものづくり改革「VMC」の基盤となるものである。また、ソフトウエア化が加速する製品開発において安全・安心を守る自動車産業のみならず、付加価値の向上と製品サイクルの早まる他の様々な製造業にとっても大きな意味があるものになっている。

村澤 賢一 氏

「新たな技術基盤によって複雑性に対応するとともに、製品の品質管理や安全性担保の難しさを克服して、日本の製造業を力強く支えていきます」(村澤氏)

Source: https://ps.nikkei.co.jp/ibm19/honda/

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