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海外と日本の就職活動の歴然とした差を実感。海外大博士から見た就職活動

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日本でも、雇用の流動化が叫ばれている。経団連も基準を変えていくなど徐々に変わって言っているようである。

こういう場合に、日本の就職事情がどうであるかを理解するために、分かりやすいのは諸外国との比較である。

私自身、このタイミングで諸外国と、日本の両方の就職活動を経験した。

私自身も、学位を取得後、日本で働こうという気は全くと言っていいほど無かった。少なくとも卒業直後は。

しかし、ベンチャースポーツにおいて、需要の増加により、一般社団法人 日本ベンチャースポーツ連盟の立ち上げ、代表理事就任したこと、これに関連した企業やメディアの方々への対応など、私が日本に滞在する必要が出てきたので、就職先を日本で探す必要が出てきた。

アカデミアの就職事情はあまりよくないとは聞くが、実体験としてはよくわからない。この記事では、海外の大学のPh.D.取得者が、取得直後に、日本において、民間就職をする際の状況を見ていきたい。

海外の博士では、在学中にうまく研究が当たりかつ、よっぽど研究が大好きで、研究が無いと生きていけない、くらいの勢いの人材以外は、他分野、特にIT・金融・コンサルに進む人が多い。むしろマジョリティと感じるくらいである。

「普通過ぎるから、それ以外の他の分野がいい」という人までいるくらいである。

海外での就職活動

まず比較対象のために、諸外国での就職活動について簡単にまとめておく。なお本記事では、海外や諸外国は、西ヨーロッパ・アメリカ・香港・シンガポールを指す。

Linkedinの転職希望をActiveにし、各種ヘッドハンティングサイトへCV(英文履歴書)をアップロードした。そこからJob DescriptionとSkill setを確認し、興味があり、かつ自分のバックグラウンドに合うものに応募をする。そうすると、毎日のように世界中から、企業のリクルーターや、ヘッドハンターからメールや電話がかかってくる。応募していないものからも、「CV見ました。」と連絡が来ることもあった。(ちなみにいまだにかかってきます。)

その中から、双方の合意が取れたものが、現場の社員らとのスカイプや電話面接、現地面接へ進む。雇う側と雇われる側は対等な印象である。

必要に応じてコード面接や数学などの筆記試験がある。やり取りは当然英語である。グローバル企業であれば、オフィスも希望の都市を選べると言ってくる。待遇も日本でも薄々知られているように、相当に良い。諸外国での就職活動は、どこもこの形式であった。例えばこちらの記事を参照ください。内定者が考えるクオンツ・ヘッジファンドの就職対策

各ヘッドハンターやリクルーターが適性がある案件を世界中から紹介してくれるので、自分から企業のウェブページを見て探すようなことはしていない。

日本での就職活動

さて本題である。日本での就職活動はどのようなのだろうか?日本における外国人向けのポジションへは上記とほぼ同じ形式ではあった。しかしながら、そこからさらに紹介された日本人向けと思われるポジションは、想像を絶するものが多かった。直接ではなく、すべてリクルーター・ヘッドハンターを通じている。

Do you have Rirekisho and Shokumu-keirekisho?

いきなり破壊力が凄くて申し訳ない。とある外国とよくやり取りをするポジションを紹介された際、次のように言われた。

“Do you have your Rirekisho and Shokumu-keirekisho? English CV is not acceptable.” (原文そのまま)

「リレキショとショクムケイレキショはお持ちですか?英語のCVは受け付けられません。」

日本在住とはいえ、外国人リクルーター/ヘッドハンターとやり取りをしているのにもかかわらず、彼らが紹介する日本の求人の中には、CV(ざっくりいうと英語版の履歴書)は受け付けておらず、履歴書と職務経歴書が絶対に必要なものもある様子。外国人ヘッドハンターがRirekisho Shokumu-keirekishoの提出を求めてきたという状況である。

Rirekisho and Shokumu-keirekishoと日本語を英語というかローマ字で表しているあたり、CVやResumeは認められなく、

 

「え?CV送りましたよね?」

「英語版はダメなんです。履歴書と職務経歴書じゃないとダメなんです」

 

というやり取りをもう何回も繰り返している前例がある感じすらする。

結局「ああ、それなら、いいです。他の案件をお願いします。無ければ他で探します。」と願い下げにした。

このリレキショも、会社ごとにフォーマットがちょっとずつ違ったりすることもあるらしい。

 

ところでカフェに行くと、手書きで履歴書・職務経歴書を書いている人々を見かけたことがある。まだ手書き指定ではなかっただけマシ、というものなのだろうか?いずれにせよ願い下げであることに変わりはない。

 

Job descriptionが無い?

諸外国のものでは、業務内容がどのようなものかが書いてあるJob Descriptionというものが必ずある。

しかし日本では、Job Descriptionが大体の方向性しか書いておらず、実際に何をやるかは入ってみるまで分からないこともある案件があった。やることが分からないのであれば、そもそも求人に応募できないと思うのだが、どうなんだろうか?

「そういう希望していることができる可能性もある。」という説明は受けたものの、その可能性がどの程度なのか?などが分からないのであれば、応募すること自体がリスクしかないのではないか?仮にほかの部署に配属になったら、即辞めることになるだろう。お互いに時間の無駄である。

結局これらのJob Descriptionが無いものには、応募しなかった。

 

英語力?TOEICの点数?

面接になった場合にも様々な難所があった。衝撃なのは英語力のところである。

面接官「へー、ケンブリッジ大学で物理学の博士なんだ。TOEICの点数は?」

私、「と、トイックですか・・・?」


TOEICとか、いつぶりに聞いただろうか?十返舎一九と同じくらい?久々に聞いた気がする。

東海道中膝栗毛の続編で弥二さん喜多さんも「英語が使える人に、日本式の英語の試験の点数を聞いてしまったの巻」とかで、ストイックに、ここで「一句」読んでしまいそうなくらいの衝撃だ。

とりあえず回答をする。「今と比べて英語も全然できなかった、イギリスに行くよりも前に受けて900超えてたと思うんで、今はそれよりは全然高いと思いますよ?」

これで済めば、まだよい。しかしながら「TOEICの試験は有効期限が2年だから、そんなに前のものだと無効。」といってきた場合には、もうどうしたらよいのだろう?「英語ができる人」が欲しいのか、それとも、「有効期限内のTOEICの証明書の点数が高い人」が欲しいのか、どちらなんだろうか?

「そんなもん満点とかで処理しておいてよ・・・。」と思ってしまった。

「冗談きついですよ。そろそろ『ドッキリ大成功!』の看板を持って入ってきてもらってもいいですよ。」ときょろきょろしてしまいそうなレベルであった。

個人的には、日本語か英語かであれば、何語で話していたかを感じなくなるくらいには英語は使える。諸外国では英語力について聞かれたことはない。そもそもJob Descriptionが英語であり、電話面接の場合にはいきなり英語で電話がかかってくる。

日本では、非常に有名な英語の試験としてTOEICがあるのは説明が不要だろう。TOEICというのは、英語の試験ではあるものの、日本と韓国以外では知名度が全くと言っていいほど無い試験である。そもそも日本人有志が発案して作ってもらった試験らしいじゃないか。

「文句言わずにTOEIC受ければいいじゃん。」確かにそうだ。しかしそんな要求をしてくるところに、わざわざ数千円と半日を使って、試験を受けてまで応募しようという気になれなかった。

しかも必要な点数は800とからしい。もはや何がしたいのかわからない。そんなに紙が必要なのか。

SPI試験

さてTOEICの他にも難所はあります。続きましてはこちら。SPI。

え、特殊部隊の経験はないですが・・・?(FBI)

ああ、違いますか、確かに理系の実験はしていましたが、京都大学の山中先生の細胞の実験ではないです。(iPS細胞)

みたいな大喜利を始めたくなってしまうほどであるが、FBIでもiPSでも無くて、SPI試験だそうです。学部生が受けるようなウェブテスト。テストセンターへ行って受けるらしいですよ。

これも、「それならいいです。」と言って願い下げしてしまった。なんだか応募できるところが目減りしていく。

諸外国でも、面接以外に課題や試験があることはあったが、数学の筆記試験や、プログラミングをするコード面接、答えるケース面接などである。これらは応募している業務に直結している様子である。

副業について

上記のように、私は一般社団法人の代表理事を兼任している。よって、これを継続できない場合には、就職ができない。

日本では、最近副業解禁の方向に向かっている風潮になっている。しかし、風潮になっているだけでまだ大半が副業が禁止のようである。

仮に副業が認められていたとしても、形態に制限があったりすることもある。例えば、アルバイト等であれば問題ないが、代表取締役や代表理事などはダメ、等々。

風潮が変わっていっているのであれば、今後、変わっていってくれるといいですねぇ・・・。

これは副業が出来ないのであれば、働くことはできないので、またまた願い下げにしてしまった。

本当に出せるところはあるんだろうか?

 

シャカイジン・ケイケン

日本の就活では、シャカイジン・ケイケンという専門用語が存在する。シャカイジン・ケイケンについて日本語と英語で調べてみても、人によって意味が違っている。英語に至っては「日本にしか存在しない興味深いカテゴリ」とか書かれている。

そもそもシャカイジン・ケイケンとは何なのか?の正確な定義を聞くと、シャカイジン・ケイケンを必要とする、と言ってきている人でさえも、正確にこたえられない。よって、分野外の人には理解が出いない何かの専門用語のような雰囲気を感じたので、カタカナで表記している。しかし文章的に読みにくいので、以後社会人経験と表記する。

社会人経験を正確に説明できない割には、社会人経験を要求してくる。いろいろと濁してはいるが、どうやら聞いている限りでは、「日本での正社員経験」のようである。

様々な種類の経験、例えば、国際的なプロジェクトの立ち上げと資金獲得、受託開発、招待講演、寄稿記事、TA/RA、インターンシップ、海外の有力研究所での客員研究経験、一般社団法人の代表理事等々、金額は様々とはいえ基本的に有給であったが、社会人経験にはカウントされないようだ。

もしここで、「正確な定義が自分でわかっていないものを、相手に要求しているんですか?」とか言うと、どうせ、「社会人経験が無いくせに生意気だ」とか言われるんであろう。結局何も言わなかった。おそらく言っていたら「ほら社会人経験が無いから、そういうことを質問する。」などと言われていたに違いない。なんとなく予想がつく。

ということは、逆説的に、社会人経験に対して、そんな予想がつくくらいには、社会人経験があるということなんじゃないか?とか思った。

なんだかソクラテスの「無知の知」みたいになってきた。この辺でやめにしておこう。

ハカセ・シンソツ

さてもう一つの専門用語シンソツである。ハカセ・シンソツという派生語もある。これはまだ海外でもgraduatesという言葉で存在しているが、学部卒を指すことが多いようである。

海外では、給料も出るのがかなり一般的である。さらにPh.D.コースの学生は、Early Career Scientist とカテゴライズされることが多かった。要するに、職業:研究者としての扱いである。国にもよるが、労働経験に含まれることが多い。卒業した後に失業保険が出る国まである。これに対して、日本では、博士は新卒である。要するに労働経験のない人扱いである。

最近では、ご丁寧なことにハカセ・シンソツという単語まであって、初任給まで記載されているではないか。高いのであればよいが、往々にして海外の大学院生の奨学金や給料よりも低い。これでは、さすがにやってられないだろう。

上記のTOEICやSPIなどで融通が利かなかったところは、おそらく内定が出たとしても「ハカセ・シンソツ」だからと言って、大学院生の奨学金や給料よりも低い額を提示されるのが容易に想像ができる。そして交渉は無効だろう。なぜならばハカセ・シンソツの規定があるから。規定が決まっているものを交渉しようとするのは、シャカイジン・ケイケンが無いからそういうことをしようとする、とか言いそうなもんである。

これでは内定が出ても無駄なので、早めに願い下げにしたまでであった。

人事部が面接をする

諸外国での場合、Human Resorces (HR)人事は、面接の予約や、チケットの予約をしてくれる受付の人、くらいの印象であった。一方で日本では、人事の人たちが面接をすることがある。

過去に博士を取って、よっぽど嫌なことがあったのか、結構否定的なことを言われた。都市伝説だと思っていたことが、実際に起こった。コミュニケーション能力はあるのか?など。コミュニケーション能力は、ネイティブスピーカーにプレゼン大会で何度も勝っていることや、チームスポーツの日本代表選手経験があることなども関係がないらしい。

専門以外の事柄に取り組むとはどういうことか?専門の「知識」がどう生きるのか?など。否定することが念頭にあるようで、何を言っても、無駄である印象であることが多かった。

人事との面接の中には、いろんなスキルを聞いた後に「でも、社会人経験ないんでしょ?」と、私に「社会人経験はない」と言わせたいだけなのではないか?と感じることすらあった。心の中で「やっとこいつをやっつけた、よっしゃ!」と勝ち誇っているような、薄ら笑みを浮かべないでほしい。

むしろどちらが、コミュニケーション能力、なんでしょうか。

スムーズにいかなかった面接は、大体の場合、人事との面接であった。特に電話での人事面接は、電話をしている人事が人間なのか、企業が作ったAIなのかを判定するイミテーション・ゲームか何かなのではないか?とすら感じることもあった。

企業が「上から」来る

人事さんには、「社会人経験を積んでから、またのチャレンジしていただければ。」という感じの話をされたこともある。これに対して違和感があるのは、なぜ企業は「雇ってやる」という上から目線の態度なのか?対等じゃないのか?むしろヘッドハンターからお勧めされたから、「じゃあ進めてもらって大丈夫ですよ」と受けてやっただけくらいの気分なのだが。

ほかの会社の募集要綱でも「転職回数の年齢÷10回までは許容」等の表現の端々に、上から目線を感じる。

ということで、採用プロセスも進まなかったが、いずれにせよ、願い下げにしていただろう。

 

その他にも、「海外の有名大学の博士の人とか、初めて見た!見た目は普通の人だ。」という「あの、上野動物園のパンダかなんかだと思ってます?そういう態度だと見物料とってもいいですか?」と言いたくなるレベルの話もあった。やれやれである。

 

結局・・・?

結局紆余曲折あり、日本にオフィスがある外資系コンサルティングファームに決定した。

はじめての会社員

別に日系企業が絶対に嫌、とかいう風には全く思っていなかったが、面接での態度や、待遇で結局外資系になったというまでである。

そもそもあまり日本で働いている印象がないが、海外大で博士号を取得した人が、日本で民間就職した場合には、知る限りでは外資系のIT・金融・コンサル分野ばかりであったのは、今回の就職活動を通して、なんとなくわかった。

おそらく上記のような願い下げの連続、消去法でそうなっている。

他の分野だと「・・・え?」ということが多すぎて、応募する気にもなれないのだろう。

 

一方、いろいろと願い下げにしている関係で「なんてプライドの高い人だ。」と思った読者もいるかもしれない。

しかしながら、海外ではそうだったということを考えると、「いや、さすがにそれはないんじゃない?他の国では、まともだったんだから。もっとまともなところ他にあるでしょう?」と考えるのは自然ではないだろうか?

もし全く採用されないような最悪の場合には、コンタクトを取っていただいていた海外のヘッドハンターやリクルーターに再度連絡を取っていて海外で就職していただけだろう。ただ同時に、ステレオタイプとしては、プライドが高そうな外資系IT・金融・コンサル業界とも一致はしている。

これはむしろプライドがどうというよりも、スタイルの差なのだろう。いわゆるグローバルスタンダード的な方法をとっているのが上記の3業種で、日本のローカルルールが優勢な業界・業種が、TOEICやSPI・履歴書・職務経歴書スタイルを優先するのだろう。適材適所、棲み分けの問題である。

現状では海外学位の人は、日本のポジションでも基本的に外国人枠で「日本語もできるといいね。」くらいのポジションや、それらを紹介してくるヘッドハンターを経由すると、プロセスも待遇も良いのだろう。

 

人材流出というよりも、むしろ追い出している?

上記のように、平たく言えば、海外大学の博士は、諸外国では「多才な天才」のように扱ってもらえる一方で、日本では「理系の博士なのに、英語が話せて、いろいろ出来る生意気な奴。社会人経験無いくせに。」位の歪んだ扱いと感じざるを得なかった。

おそらく、これは一例にすぎず、私が応募した先がたまたま悪かった。担当者が合わないだけだったなど、いろいろな理由はあるだろう。それでも日本「だけ」反応が違っていた。

仮に私の個人の経験というだけであれば、私がただ我慢をするか、いざとなったら外国で働けばいいだけである。

しかしながら、今後グローバルで戦っていかなければならない日本の状況を考えると、日本のローカルルールでがんじがらめにせず、もう少しグローバルスタンダードな対応をしないと、日本は相手にしてもらえないのではないだろうか?たとえ日本人であっても。

グローバル化が進むということは、他の人材争奪戦を繰り広げている人たちと、必然的に競うことになる。これでは、いくら日本人といえども、好き好んで待遇が悪いほうへ移るとは考えにくい。このままでは日本は、今後大丈夫なのだろうか?と少々心配になるほどであった。

 

よく「海外への人材流出が止まらない」というが、「流出」には、まだ「せき止めようとしているが、出て行ってしまっている」というニュアンスを感じる。しかしながら、上記の状況を考えると積極的に「追い出して」いないだろうか?

 

新卒採用の多様化なども含め、今後進むであろうの就職改革。

このあたりの改革も進み、よい方向へ行くことを願ってやまない。

Author: 篠原肇

Source: https://hajime77.com/entry/phd-job-hunting/

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